映画「飢餓海峡」

「飢餓海峡」は、私が10年ほど前に初めて読んだ水上作品。
この本で私は水上勉の世界にはまり、次々にこの作家の本を手に取りました。

舞台は、戦後まもなくの東北地方。
ひとつの殺人事件を追って、
犯人の足取りを追う刑事を軸に話が展開していきます。
科学捜査も、パソコンも携帯もコピーもFAXも、新幹線もない頃のこと。
時間と手間をかけて、丹念に犯人の足取りをたどる刑事、
謎をとくカギをにぎったまま姿を消した娼婦、
聞き込み調査のなかで、少しずつ明らかになっていく犯人像とその生い立ち。

まだ日本全体が貧しかった時代。
安楽とはいえない生活のなかで、
ひとすじの光明をめざして懸命に生きる人々の姿が描かれています。

映画には小説にはないエッセンスが効果的に加味されていて、
小説の人間ドラマをさらにドラマチックに演出しています。

「日本映画の傑作」とも称される作品、
1965年製作のモノクロ映画で、画面はちょっとみにくいけど、
小説を読んだ人には特に、お勧めしたい作品です。

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