小説:「殉愛」
「殉愛」は、大阪の芸人やしきたかじんと、その闘病をささえた女性の2年間を綴った物語。
小説の発売直前、キンスマで大きく取り上げられた。
番組の再現ビデオは、本を読まなくてもいいくらい充実した内容だったけど、著者の百田尚樹さんのファンなので、さっそくアマゾンで注文。すると、なんと「品切れ」と表示された。やっぱり番組の反響は大きい。通常は即日発送のところ、今回は注文してから手元に届くまで、3日かかった。
そして、ようやく届いた本を手にとってみると、意外に分厚くて重い。とはいえ、読み始めると没頭してしまい、1日で完読した。
ノンフィクション小説なので、できるだけ事実をそのまま伝えようという配慮がみられ、登場人物もほとんどは実名。メモや手紙の内容も原文そのまま。たかじんの妻さくらさんを架空のゴシップでこき下ろした週刊誌などとは一線を画し、「真実を語る」という強い意図をもって書かれている。あくまでもこの作者がみた真実ではあるけど。そういう意味では、やはりフィクションなのかもしれない。
人は、出会うべきタイミングで出会うべき相手に巡り合うようになってるんだなぁと実感する内容だ。
たかじんの要望に100%応えられる女性はめったにいないだろうけど、それにぴったりはまったのがさくらさんだった。彼女は常にたかじんのことだけをまっすぐ見つめ、自分の頭で考え、自分の意思で行動できる自立した女性。
ふたりは濃密な関係性をもって闘病生活を維持し、その間、お互いに肉親との連絡さえ断ち切っている。カップルが100組あれば、100通りの関係性があるんだなぁと実感する。
この本は装丁だけでなく内容もずっしりと重い。
闘病生活が詳しく書かれていて、体調が良くなって喜んだかと思えばすぐにまた悪くなってしまうという繰り返し。1歩踏み出すごとに少しずつ泥沼に落ち込んでいくように、復帰への希望は失われていく。
でも、暗い話ではない。
読み終えた後も、登場人物のリアルなやりとりが長く心に残る。
そして、またもう一度読みたくなってしまう。
この作家が見た「光」を、もう一度、一緒に観てみたくて。
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